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舞台:『逆鱗』(NODA・MAP) [お芝居・舞台のこと]

NODA・MAPの舞台を観に行きました。

NODA・MAP第20回公演
【逆鱗】

gekirinnn.jpg
2016.3.26(土)13:00~@シアターBRAVA!

<作・演出>
  野田秀樹 
<CAST>
 松たか子 瑛太 井上真央 阿部サダヲ
 池田成志 満島真之介 銀粉蝶 野田秀樹

 秋草瑠衣子 秋山遊楽 石川朝日 石川詩織 石橋静河
 伊藤壮太郎 大石貴也 大西ユースケ 織田圭祐 川原田樹 菊沢将憲
 黒瀧保士 近藤彩香 指出瑞貴 末冨真由 竹川絵美夏 手代木花野
 中村梨那 那海 野口卓磨 的場祐太 柳生拓哉 吉田朋弘

NODA・MAPを劇場で生で観るのはこれが初めて。
今まで映像などでは何本か観ていたのだけど、
なんとなく、世界観が独特で、ちょっと難しい(>私には)と
思ってしまって、なかなか足を運べていなかった。
けど、今回、実際ににその世界観を肌で感じて、
「ああ!!!演劇の面白さってこれだ!!!
もっと早く劇場で観ておけばよかった!」と思いました。
すごく面白かったです。

登場人物たちの圧倒的なセリフの量とともに、
膨大な情報量を持って進んでいくので、
物語の流れや世界の繋がりを途中で見失ってしまいそうに
なります。(いや、正直、ちょっと見失いました。^^;)
だけども、序盤から小出しにちりばめられているキーワードや、
交差する世界や人物の存在が、
最終的に一つの真実(もしくは彼らの「想い」だったのかも)へ繋がっていく
のがわかると、
観ているこちら側にも様々な感情が押し寄せてくる。

一言で物語の筋を説明するのはなかなか難しいけど、
本や映画などとは違う、演劇の舞台だからこそできる方法で
見せられる物語、そんな風に思う。



海に浮かぶ水族館に、「人魚」用の新しい水槽が作られるところから
始まる物語・・・。
水族館館長、人魚学を学ぶ館長の娘、人魚学を教える教授、
水族館の警備員をやめて新しい鵜飼いプロジェクトの隊長(鵜長)に任命される男、
電報を配達しに来たことから物語に巻き込まれていく青年、
鰯の水槽を毎日見に来る謎の老女、
そして、人魚と名乗る女・・・・

陸上と海の底、現在と過去、幻想と現実を
何度も何度も行き来します。
最初は、それこそアンデルセンが描くような
メルヘンのイメージを膨らませて観ていたのですが、
だんだんと、シリアスな展開へ向かっていきます。
2匹の魚をぶった切って作った“人魚の設計図”の話に怖さを覚えつつ、
深海へ向かった青年が、人魚と出会って、聞かされる“逆鱗”の話には
とても引き込まれました。

「人魚の肉を食べて不老不死となった八百比丘尼、
 では、人魚が人間の肉を食べるとどうなるのか?」

「死者の時間は、海に溶けて塩になって固まって、首筋に逆さに付いた鱗になる。
 人魚はその逆鱗を食べる。」

ただ、これがただの「ファンタジーの真の怖さ」的なオチがつく物語ではなく、
そんな程度の怖さの物語ではなかったことに気付いた時に、
背筋が寒くなりました。


人魚と名乗る女の首筋についた逆さの鱗に書かれた文字を並べてできる一文、
「NINGYO EAT A GEKIRINN」=「人魚は逆鱗を食べる。」

この一文を起点に、一気に物語の真相が見え始め、
悲しい真実へと向かうのです。しかも、史実に基づいた悲しい真実へ。


「NINGYO EAT A GEKIRINN」・・・「NINGEN GYORAI KAITEN」
(人魚は逆鱗を食べる)     (人間魚雷「回天」)

 ※「人間魚雷「回天」」=
 太平洋戦争末期、人間もろとも体当たりし、命と引き換えに敵艦を沈める極限の兵器。


人魚がしきりに、「昔々の昔々の昔々の昔…」と行っていたのは、
10年ひと昔として、つまりは70年前の話ということだったのね。

「沖の船が見える“目が良い”男を探していたこと」
「危ないことは承知で任務を引き受けるる人間を探していたこと。」
「イルカが別名「ハタハタ」と呼ばれること。」
「ハタハタ」が漢字で書くと「鱩」であること。
「鰯は天敵に襲われると鱗をまき散らし相手を目くらまし、仲間を逃がす…」

前半から小出しに撒かれていた布石が、すべて残酷な史実を指していた。

「人魚」は「人間魚雷」であり、
「鵜長」は魚雷部隊「上官」であり、
「潜水夫」は「人間魚雷の乗組員」であり、
「人魚学の研究者」は「魚雷をの開発者」であった。


終盤で、人魚(魚雷)に乗って、一人ずつ発進していくシーンは、
観ていてとても辛かった。
乗組員たちの心の声が聞こえながら聞こえないふりをしつつ、それでも
その言葉を誰にも届かない言葉でひとつづつ発する上官の心の痛みが、
私にも痛かった。

この舞台、セット…というか舞台道具が素敵でね、
アンサンブルさんたちが持ち動く
反射性と透明性のある素材の四角い大きなパネルが水やガラスを見せ、
丸いパネルは水中の泡を見せる。
(あれはいったい何の素材でできているんだろう?)
魚群を演じる彼らの群舞のような動きも見事で、とても美しいのですが、
その、美しさのイメージがあるからこそ、余計に、
この後半のシーンが辛くてねぇ。。。
「8月18日か・・・・」と、呟く上官の言葉が、とても耳に残りました。


そして、魚雷(NINGYO)とともに水底に沈んだ男のことを思って泣き叫んだ
魚雷(NINGYO)の声が響くラストシーンがとても切ない。
オープニングでの、
「魚は泣かない。泣くためには空気が必要。やっと水面に出て泣いた声が歌声に聞こえた。」
・・・的なことを語っていた、NINGYOのあの言葉は、
この時の魚雷の叫びとつながっていたのか、とわかったときに、
更に悲しさが増してきた。


伝説と、史実を巧みに交錯させた、なんとも不思議な物語でした。


役者陣の演技も、とてもよかったです。

松たか子(NINGYO)
 人魚役とはいえ、“髪をなびかせ美しく歌う”ような人魚役ではなく、
 緑の黒髪をたたえた、「どうかしてる女」とすら呼ばれるような、正体不明な役なのに、
 とてつもなく魅力的でした。
 悲しき人魚・・・ではなく、悲しき「人間魚雷「回天」」だったその正体。
 ラスト、魚雷として泣き叫ぶ声が、とても印象的でした。

瑛太(モガリ・サマヨウ)
 電報の配達員から、鵜飼いチームに巻き込まれ、人魚と出会う男。
 舞台上で「素朴さ」という存在感を こうも上手に出せる役者さんは、なかなかない。
 個性的な奇抜さや力強さではなく、その青年のそのままの存在を伝えてくれていた。
  
 
阿部サダヲ(サキモリ・オモウ)
 警備員から転職して鵜飼いチームの長になった男。
 登場シーンからいろんな笑いをしっかりさらっていきつつも、
 シリアスなシーンではしっかり泣かせてくれる。
 大好き、サダヲ。
 
井上真央(鵜飼ザコ)
 人魚学の研究者で、人をたぶらかす、割と悪女な役。
 かわいい外見とは違って、舞台で発する声はなかなか独特で、
 粘着質な嫌気も表現できる役者さんなのですね。
 
池田成志(鵜飼網元)
 水族館の館長。セリフ量はほかの四人に比べてそこまで膨大ではないのに、
 ナルシーは声の存在感が抜群。
 嫌な役、調子のいい役、はまるわーー。

満島慎之介(イルカ・モノノウ)
 イルカ君ことイルカの担当者。ザコにそそのかされて鵜飼いチームへ。
 イルカ帽をかぶった純真素朴な青年。
 NODA・MAPへは初参加だそうです。

銀粉蝶(鰯ババア/逆八百比丘尼)
 毎日鰯の水槽を観に来るなぞの老婆。そして、水底では、人魚の長老的存在。
 銀粉蝶さんは、もうさすがの存在感。
 陸の世界と海の世界と、どちらにおいても傍観者であり一番の当事者である、
 その違和感と一体感のどちらをも見せてくれる気がする。

野田秀樹(柿本魚麻呂)
 人魚学の教授。
 野田さんの早ゼリフはちょっとついていくに必死だけど、 
 ついていけなくても雰囲気でわからせてしまうところがすごい。
 生で観られただけでも、良かった。



たぶん、一度見ただけでは理解しきれれいない部分もたくさんあるのだろうけど、
それでも、見に行ってよかった。
今後も、怖がらず、NODA・MAP見続けてみようかな・・・。

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