SSブログ

今日の本:『凍りのくじら』(辻村深月) [本のこと]

久々に、初見の作家さんの本を読みました。
norizo!さんのブログで読んで、
気になっていた本です。

凍りのくじら

凍りのくじら

  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 新書


作者の辻村さんが、
「藤子先生へのオマージュを思い切り書かせていただきました。」と語っているように、
藤子F不二夫の「ドラえもん」の道具をフューチャーしたタイトルが
一章ごとにつけられています。
 第1章「どこでもドア」
 第2章「カワイソメダル」
 第3章「もしもボックス」
 第4章「いやなことヒューズ」
  ・ 
  (中略) 
  ・
 第10章「四次元ポケット」   ・・・ こんなかんじ。

いやぁ、面白かったです。
派手さはないけれど、好きですこの作品。

    【内容(「MARC」データベースより)】
    カメラマンの父が失踪してから5年。
    毀れそうな家族をたったひとりで支えてきた高校生・理帆子の前に
    現れた青年・別所あきら。
    彼の優しさが理帆子の心を癒していくが…。
    家族と大切な人との繋がりを描く「少し不思議」な物語。

クライマックス部分を読むまで、
ミステリだと気がつかずに読んでいました・・・。
背表紙にちゃんと「“少し不思議”な物語(ミステリー)」
って書いてあったのにね。
(あらすじ や 内容紹介文 を読むのが 大好きな私としたことが^^;)

ミステリじゃなくても 十分面白いところに、
持ってこられた“あの展開”も、「アリ」だと思うし、
色んなことが繋がる瞬間を、とても上手く読ませてくれています。
大きな衝撃というよりも、
実はじんわり浸透してきてたんだ・・・って、そんな感じでした。

最初は、正直、“妙に悟りきってしまっている主人公” に
「んー?イマドキすぎて逆に嘘くさくない?」なんて、違和感を覚えつつ
読んでいたのだけれど、
第10章を読み終える頃には、
悲しさや、切なさや、安心感や、激励の思いや・・・、
もう色んな思いがいっぱいいっぱいこみ上げてきていました。

「そんな大したこともないのかな」と、思ってしまっていた自分が 浅はかだった。

最初、10章のラストがエンディングだと思ったんですが、
でも、ちゃんとその後に、
キレイに・・・というか、素敵に綴られたエピローグがあって、
更に良かったです。(この辺は女性作家さんらしくて好き。)

それまでの主人公の中で カタマッテいた何かが
まるで溶け出したような柔らかいラストでした。

そして、この作品の面白さの一つは上記したように、
「ドラえもん」がうまくフューチャーされているところ。
読む前は、“ちょっと奇をてらってる”くらいにしか
インパクトはなかったんですが、
実は一つ一つの道具の意味や効果が、
物語にとって、恐ろしく深くて響いているんですよ。
「どこでもドア」 や 「カワイソメダル」 なんかに反映させた
人間描写は、実に巧みだなぁ。

周りと距離をおいて 冷めた生き方をしている主人公が、
別離や出会いや、ちょっとした出来事をとおして 少し変わっていく。
・・・そんな ありがちなストーリーを、
ちょっと変わった不思議な切り口で描いてある、
まさに、紹介どおりの「SF=Sukoshi・Fushigi=少し不思議」な物語でした。

---------------------------------------------------------

    追記:
    本とは全く関係ありませんが、   
    この、藤子F不二夫さんの使う書き方、「SF=Sukoshi・Fushigi」。
    読んだときに、とっても懐かしくなりました。
    21世紀FOXという劇団の舞台が好きで、良く観に行ってた頃
    観た舞台がこのタイトルの原作の話だった。
    
    (ちなみに、この劇団はスネオの声でお馴染みの肝付兼太さんの主催です。)            

    http://www.21fox.co.jp/index2.htm知ってる人、いるかなぁ?


nice!(4)  コメント(8)  トラックバック(3) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 8

はじめまして^^
ナイス&コメントありがとうございました♪

紹介されている作品とても素敵な感じですね
ミステリにドラえもんの道具がコントラストですか!
イメージからすると軽い感じに思われてしまいそうですが
人物描写も繊細そうで心に響く感じのお話なのですね
とても気になりました

観劇も趣味のようですね^^
私も昔は良く出かけました
知り合いに小劇団で役者をしていた方がいたので
アングラ舞台ばかり色々観ました
当時劇団☆新感線は大阪で人気がありかなり噂になっていました
今では全国展開されていますよね~
パワフルな舞台だと聞いた記憶があります
久しぶりに演劇観に行こうかな^^って思いましたよ~
by (2006-06-20 22:13) 

tap

うわ〜、これ、かなりいい感じの臭いがしてますね〜。
まだまだ読むものあるのに〜、チケット取り過ぎてかなり財布がやばいことになってるのに〜(←結構切迫・笑)。
またまた罠を仕掛けられた気分^^;
私もあらすじ読むの、好きですよ。
っていうか、本を買う時の基準の一つです。
タイトル(またはジャケ)が気になって手に取る→あらすじを読む→最初の数ページ読む。って感じです。
どんなにいい話でも書き口が好きじゃないと楽しめない軟弱読書人です(笑)
by tap (2006-06-21 00:07) 

nanayo

>Betty さん
こんにちは☆
初めて読む作家さんの本はいつもドキドキなんですが、
これはお勧めです!機会があれば是非♪
今や新感線はすごい派手ですもんね。といいつつ・・・最近見出した
ばかりなんで昔を知らないのが正直なとこなんですが(^^;)
逆に、上記↑の「21世紀FOX」は昔は地方公演まで来てくれていたのに、
今は東京公演しかやんなくなっちゃいました・・・。(大阪在住なんで、殆ど行けなくなってしまっった。)
by nanayo (2006-06-21 00:29) 

nanayo

>tapさん
この作品、1980年生まれの若い女性の作者さんなんですが、
ほんと、いい感じでした。
ちょい暗めなんですが、でもいい感じなの。(←うわ。表現力乏しっ。)

まずは文庫の「あとがき」や「解説」から読むという
邪道な読み方をしますね。私(^^;)はは。
但し、ミステリの場合は、「本編の核心に触れます」って
書いてあると、「チッ」っと舌打ちしつつしぶしぶ後まわしにしますが。

あ、あと「帯文句」にもよくつられて本を買います・・・。
なので、私も本代チケ代でよく月末に青く(赤く?)なること多し!
同志!!(←迷惑な意識か?)
by nanayo (2006-06-21 00:42) 

長谷川舞

私もこの作品を最初に読み始めた時には
主人公に感情移入しにくいな~とか
何でも「SF」にあてはめていくくだりが作為的で
うむむ・・・と思いながら読んでいたんですが
中盤から後半にかけて怒涛のように面白くなって
最後は泣いてしまうくらいもっていかれました。
辻村さんの作品は全て網羅しましたが、どの作品も
とても面白いですよ。

TBさせて頂きました。
by 長谷川舞 (2006-06-21 09:37) 

nanayo

>長谷川舞さん
ホント、中盤からラストにかけては一気に読んでしまいました。
私も泣いてしまったクチです。
他の作品も是非読んでみたいと思っています♪
TBありがとうございました。
by nanayo (2006-06-21 18:36) 

こんにちわ。
はじめて読んだ作家さんの作品が
自分の好みにあってたり面白かったりすると
なんかちょっと嬉しいですよね♪
自分の身近にもありえそうな展開や恐怖心なんかも
かなり感情移入できるポイントだと思いました。
本を読み終わった後は
自分のことをSFに例えるならば「ちょっと不誠実だな」
とか考えたりしてました(笑)
(も、もちろん今は不誠実ではありません。。。。)
辻村さんは本の厚さが少しずつ減って
内容が少しずつ洗練されてきた気がします。
という事で、私自身もこれからも読んでいこうと思っている
作家さんです。
by (2006-06-21 23:45) 

nanayo

>norizo!さん
norizo!さんのレビューを見たおかげで出会えた作家さんです。
ほんと、初見の作家さんって趣味に合うかどうかが
いつもドキドキなんですよね。
また色々参考にさせていただきます!
>「ちょっと不誠実」
・・・意味深(^^;)
“脱”出来て良かったです。(^^)
by nanayo (2006-06-22 00:21) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 3