舞台:『噂の男』 [お芝居・舞台のこと]
待ちに待ちに待ってた舞台、観て来ました♪
【噂の男】 06.9.10(日)12:00 @シアタードラマシティ(大阪)
作 ◆福島三郎
演出◆ケラリーノ・サンドロビッチ
出演◆堺雅人 橋本じゅん 八嶋智人 山内圭哉 橋本さとし
この面子で作る舞台なら、行かなきゃダメでしょう?・・・きっと多くの人が思ったと思う。
「これで面白くないわけがない!!」と、
観る前から、評価レベルをかなり高めに設定してしまうところも否めない。
でも、裏切られなかったです、面白かったです、満足させてくれました。
「感動」・「笑い」・「恐怖」・・・・
今まで観てきた舞台の主なカテゴリーって、
大きく分けて大体その3つなんですが、
この【噂の男】は、「恐怖+笑い」のフュージョンな舞台だった。
そして、そのどちらの要素も「これでもか!」といわんばかりのアクの強さ。
とことん抜かりがないです。
演出も役者陣も、さすがとしか言いようが無いくらい。
「いやーな男たちの、いやーなお話。」
というキャッチコピーの通りの、ブラックなブラックな話で、
エゴ・悪意・心の裏側・二面性・負の側面・・・
それらの人間の「いやーな」部分が、あからさまに表現されながら展開していきます。
登場人物全員が、人間の二面三面を演じているんですが、
それがめちゃめちゃ自然で、余計にすごく怖いの。
役者さん全員の上手さなんでしょうね、これ。
力が入ったテンションが高いだけの“勢い芝居”じゃないのに、
こんなにパワーを感じるなんて、
演技の上手さの成せる技だと思います。
そして、そんなブラックな話なのに、大爆笑のシーンの連続。
堺雅人さん以外は、ネイティブ関西弁スピーカーばかりだったので、
大阪のとあるお笑い劇場の舞台裏・・・という設定の自然さは抜群☆
台詞の聴きやすさも最高☆
決して、こてこての厭味っぽい感じではなく、ちゃんと舞台然としているところもいい♪
堺さんまで、一瞬関西弁になってしまうという一技をちゃんと笑いどころに
持ってくるとこまで計算してくるあたりにも、センスを感じました。
じゅんさん&さとしさんのダブル橋本の漫才は最高でしたね。
漫才台本は中川家だというせいもあり、
ネタの上手さは勿論、この二人本物だよ!と思わせてくれる息の合いよう。
劇団☆新幹線時代のさとしさんは、観たことがないので知らないんですが、
どうやら、お二人は約10年ぶりの共演だそうで、
いいもの見たなーと、そこだけでも価値ありな感じでした♪
結構、衝撃シーンも満載で、
山内さんと堺さんの×△シーンはとくに・・・
つい、使ってたオペラグラス置いてしまったほど。(直視しちゃいけないような気がして(^^;))
そんな、明るめなシーンもあれば、
この芝居のすごいところは、
舞台の上、血みどろで何人も死人が転がってるスプラッタな状態で
結構展開もシリアスなところまで来ているにも関わらず、
客席大爆笑!!!って、ところ。
こんな狂気のシーンで笑えるなんて、ありえない!!どういうことなんだ?!と、
その場面で笑っている自分がおかしいんじゃないかとまで思えてくる。
そしてそれが怖くなってくる・・・。
「鳥肌が立つくらい」・・・って、よく使っちゃう表現ですが、
観終わって、ホントに体の底のほうからゾクゾクしてきたもの。
いろんな意味で、重低音な攻撃を受けまくってきた舞台でした。
そして、何度も書いてしまいますが、
役者一人ひとりがメインをはれるだけの器ある人ばっかりなので、
全てのシーンがホントに目が離せませんでした。
全員が、「この人が出てきたらきっと何かしてくれるぞ!」という曲者ばかり。
観る方も全身で立ち向かわなきゃ!(←何に?)と
やる気になるから楽しいです☆
■堺雅人さん(鈴木光明:宝田興業のエリート社員。宝田グランド劇場支配人 )
・・・・ 実はこの方のお芝居観るの初めてでした。
大河の新撰組も見てないし、舞台の映像も観たことがなかった。
一見さわやか好青年の堺さん。
「喜・怒・哀・楽を 全て笑顔で表現する男!」と、
ネタにされて爆笑が巻き起こってました。
他、「微笑みの王子」「スマイルゼロ円」・・・
なるほど、そういうスタイルでスタンスか。
確かに、過去と現在の2パターンを演じる堺さんの役の笑顔の表現の幅に注目。
優しくも、怖くも、いい人にも、悪人にも見える。
他の役者さんに比べたら、決して濃くはないけれど、
その一見の普通さが際立ってました。
■橋本じゅんさん(モッシャン:宝田興業所属の漫才コンビ“パンストキッチン”のツッコミだったが、
相方のアキラに先立たれ、今は酒びたりの日々。)
・・・・ いやぁ、この人はホントに上手い!
今回、正直 一番その演技力を誇示していたのはじゅんさんだったと思う。
「面白いことをする」ということが、「上手さ」の上に成り立っているんだと
いうことを 実感させてくれる人です。
廃人の時のあの目。何も見ていないようで 実は奥になにか持っている目。
一瞬、「轟天」が舞い降りてくるところもありつつ・・・(^^;)、
あそこまで 自由自在な振り幅を見せ付けてくれると 圧巻です。
■八島智人さん(加藤信夫:ボイラー室の整備のためにやって来た、ボイラー技師。)
・・・・ 生で拝見するのは初めてでした。
以前、三谷幸喜さんの舞台で観たときの
フットワークの軽さと センスの良さが印象的だったのですが、
この舞台で、そのセンスの良さは万能だったんだ と確信しました。
流石に、前半の コミカルで良く喋る役回りは イメージ通りだったんですが、
後半の、凶悪さの演技のハマリ具合に びっくり。
全然浮き足立たない ドスのきいたキレっぷりは、拍手ものだったなぁ。
■山内圭哉さん(ボンちゃん:宝田興業所属の売り出し中ピン芸人。 )
・・・・ この人の安定感は何なんでしょうね?
空気のユルさに重みがある。(←表現しにくいけどそんな感じ。)
決して天然ではないのに、あの「笑いをそそる事必至」の喋り。
ほんと何なんでしょう。
あのスキンヘッドは実はヅラだった!って設定は ツボでした。
普通の髪型してる山内さん(ヅラだけど)って、見るの2度目だけど、
すごい好青年で 若く見えるんですよね。
演技も外見も変幻自在です。
■橋本さとしさん(アキラ:“パンストキッチン”のボケで、モッシャンの相方。12年前に他界。)
・・・・ 身長の高さと体の大きさを別にしても、
すごい圧力がある人。
さとしさんが 漫才コンビのボケ担当ってのが
意外にもしっくりいってたのも面白かったですが、
裏表の顕著さを演じつつ、結局最期まで本心どっちよ!?って惑わしたままで
イライラさせてくれました。もちろんいい意味で。
【ダブリンの鐘つきカビ人間】で観たキレっぷりとは一味違うキレ。
他にももっと観たい!と思わせてくれる役者さんです。
このグロ&ブラックなテイストは、
もかしたら好き嫌いが分かれるのかもしれないけれど、
私は、こういうの結構好き。
なかなか濃い舞台で、満喫してこられました♪
KERAさんの舞台を、ちゃんと観るのは実は初めてでした。
これは、ヤミツキになるわ。と思わせてくれる独特さ。
手元にあるのにまだ観ていなかった【労働者M】を、早く観なきゃ!という衝動に駆られています。
いいな~。凄くみたかったのですよ。この作品。
しかも名古屋でも公演あったのですが、仕事の都合でいけず……(苦笑)
きっと、DVD化されるのでそれに期待です。あー本当じゅんさん見たかった。
by 蒼雲 (2006-09-11 18:01)
おぉ~、見てこられたのですねぇ。レポありがとうございます。
一味違った笑い・・・でもこのくらいブラックなのが好きな私。
恐しさが入った笑いは締まりが出ていい~感じやね~んなぁ~。
by mimisuke (2006-09-11 19:22)
>いろんな意味で、重低音な攻撃を受けまくってきた舞台でした。
私も、この攻撃にやられてついつい三度見いたしました~(笑)
”あーっわかるわかるっ!!”と、力強く頷きながらレポ拝読♪
やっぱりスタッフ&キャストとも、伊達に引っ張りダコじゃないんですよね。
恐るべし曲者集団っ!!
by CHIF (2006-09-11 20:00)
はい。見なきゃだめでしょ~と思いました。
チケットとれませんでした(泣) いいな~。
by AZUL (2006-09-12 00:32)
> 蒼雲さん
もう、大阪の短い公演期間でのチケットが取れたことに感謝です。
でも、観たとはいえ、既に映像化が待ち遠しい!!
by nanayo (2006-09-12 02:23)
>mimisukeさん
行ってきたよー。
観終わってしばらくしてからも、余韻がすごいです。
それも、感動とか笑いとはまた一味違った感覚。
後から効いてくる変な薬みたいな・・・(どんな説明だ^^;)
by nanayo (2006-09-12 02:27)
>CHIFさん
3度もなんてうらやましすぎる!!素敵!!
なんかね、お腹に鈍く重たいパンチを入れられた感じなんですよね(^^;)
ほんと「恐るべし」ですよ、この集団。
by nanayo (2006-09-12 02:31)
>AZULさん
なんとかプレオーダーで押さえましたが、
チケット即完だったみたいですもんね。
カーテンコールで「福岡公演が若干余っているので、
そこでまたお会いしましょう」とじゅんさんが言ってましたが、
行けるかー!!遠いよ!と心で泣きました。
by nanayo (2006-09-12 02:35)
見に行きました。刺激的でした。
橋本じゅんさんがとってもよかったですね。
by ランランラン太郎 (2006-09-12 17:11)
>こんな狂気のシーンで笑えるなんて、ありえない!!どういうことなんだ?!と、
これ、すっごくわかります!
ありえないのに笑ってしまう自分がいる。人間ってとても複雑なものなんだな〜と思っちゃいました。
>空気のユルさに重みがある。
うんうん、ただやたらにユルくないんですよね。
あの絶妙の間と、押さえたトーンのツッコミ、なんてセンスと実力のある人なんだろう・・・。
本当に、どの人をとっても舞台の醍醐味を教えてくれた!満足させてくれた!と、心から言える舞台でしたね。内容は満足なんだけど、何だか胃が重くなるような、すごく不思議なものでしたが。
でもこういうの、好きなんだよな〜。
by tap (2006-09-12 22:45)
>ランランラン太郎さん
じゅんさん、ほんと凄い人だったんだなぁって今更ながらに実感しました。
確かに、「刺激的」な舞台でしたね。
by nanayo (2006-09-12 23:49)
>tapさん
>ありえないのに笑ってしまう自分がいる。
その笑ってる自分がなんだか後ろめたい・・・ってな感覚なんですよね。
わー、やっぱり皆感じますよね、この感覚。
「こういうの大好き!」って大きな声で言うのがはばかられる。
・・・でも 好きなんだよ・・・みたいなね。
良かった・・・後ろめたいのが自分だけじゃなくて。
by nanayo (2006-09-12 23:54)
コメントありがとうございました!
素晴らしいレポ!!ほんと笑いと恐怖は紙一重ときいたことありますが、一緒になると、なんて言っていいやらですねw
笑えないのに笑っちゃう、そのブラックさが、血みどろはきらいだけど、私の好きなお芝居のひとつになった要因かなとおもいます★
で、あの漫才、中川家だったんですね!
今思えばなんとなくそんな感じがw
by アメD (2006-09-13 01:05)
コメントありがとうございました!
レポ楽しく拝見させていただきました。
本当にこんなに素晴らしい舞台と役者に巡り合えて幸せだなぁと
感じられた時間でした♪
出来ることなら福岡まで行きたいところですが(笑)
早く映像化されるといいですね!
by 福助 (2006-09-13 23:07)
はじめまして。piccorinaです♪
先日はコメントありがとうございました!
nanayoさんは山内さんと堺さんの衝撃シーン、オペラグラスを置かれたのですね。
私は逆で、膝に置いてたオペラグラスをつい手にとってしまいました。(ガバッと・・・)お恥ずかしい限りです。
by piccorina (2006-09-13 23:46)
>アメDさん
改めてレポを書くと、観ている最中には気がつかなかった
気味悪さとそれ見て笑ってた罪悪感がまたふつふつときますね。
でも、最終的には面白かったーって感想に行き着くんです。
後からもこんなに効いてくる舞台って、なかなか無いんじゃないかなって。
W橋本の漫才は、ほんと最高でした。
さとしさんを叩いてる音が本気で痛そうでしたよね。
by nanayo (2006-09-14 00:35)
>福助さん
色んな部分でレベルの高いお芝居って、見てよかったーって思いますよね。
ホント、福岡で余ってるといってたチケットがどんなに欲しくなったことか・・・(^^;)。
映像化で、あのシーンやあのシーンがクローズアップされるのは、
見たいけど怖いけど見たいけど・・・・て、気持ちがせめぎあっちゃいます。
by nanayo (2006-09-14 00:42)
> piccorina さん
>nanayoさんは山内さんと堺さんの衝撃シーン、オペラグラスを置かれたのですね。
置いてしまいました(^^;)なんかドキドキしてしまって・・・。未熟。
勇気を持って(笑)アップで見届けてあげれば良かった・・・。
山内さんのナマズとナマズケースの時には
オペラグラスに手が伸びました(←見どころがおかしい?)
by nanayo (2006-09-14 00:50)
nanayoさま
こんばんは。コメント&トラックバックありがとうございました。
見応えのあるお芝居でしたね。
私はこの5人はそれぞれ別のお芝居で観たことはあるのですが、今回は5人一緒なのに各人の個性は際立っていて、それでいてアンサンブルのよさもあって、ハイレベルの舞台だったと思います。もちろん、脚本や演出もすばらしくて。
鈴木支配人とポンちゃんの例のシーン、私は2列目から肉眼で凝視してしまいました(笑)。(オドロキすぎて目が離せなかった、というのが正直なところです。)
by スキップ (2006-09-14 02:46)
ぐぅぅー
お久しぶりです~
やっぱり無理してでも行けばよかった…(涙)
全員好きな人で固められた舞台なんて
そうそうないですものねぇ…
しかも中川家!!!DVD発売を切に願います…
by itsuka (2006-09-14 17:06)
>スキップさん
>私は2列目から肉眼で凝視してしまいました
2列目なんて素敵ですね!いいなー。
いやぁ、目は話せなかったんですが、グラスを覗く勇気が無かった(^^;)
この舞台、確かにハイレベルでした。個性がぶつかり合っているのに
お互いのアク決して殺さないのは凄く難しいことなんじゃないでしょうか。
誰が一人だけがさらっていくのではなく、5つの台風の目がちゃんと立在してる
。皆さん器用なんだよなぁ。
by nanayo (2006-09-14 20:42)
>itsukaさん
お久しぶりですー。
もう、これはキャスト表観ただけで即行くことを決めた舞台でした。
観るまではどんな内容なのかも殆ど調べず、
このメンバーなら何だっていいぞ!という思いで観劇に臨んだのですが、
案の定ノックアウトでした。
映像化されたら是非!!
by nanayo (2006-09-14 20:47)
こんにちは。
早速遊びにきてみました!
nanayoさんの感想を読んでいると、また観たくなっちゃいますね。。
ケラさんの『労働者M』
これは私はちょっと難しいな~~、ん???
って感じだったので、是非nanayoさんの感想も聞いてみたいです。
感想、楽しみにしてます☆
by copanda (2006-09-15 18:05)
>copandaさん
こんにちは。
『労働者M』、まだとってあるんですが、
全くどんな内容か知らないので、不安と期待が半々な感じ☆
またテイストがちがうのなか?
でも、色々観てみたいなと思ってます。
by nanayo (2006-09-15 23:17)
やっぱり、nanayoさんも観に行かれてたのですね♪
『これはnanayoさんも行くだろうな~』って密かに思ってたのです。
『思いっきり笑う!』ってコトをしてたら、次のシーンではグロテスクで
『思いっきり引きつる!』ってコトになったりして、
顔の表情が忙しく変わったお芝居でしたね(^皿^)
by doowutchyalike (2006-09-17 00:34)
>まちこさん
私もー。まちこさんきっと行かれてるだろうと思ってました♪
肩の力を抜いて観る舞台・・・ではないですよね(^^;)
観る側も「よし!観てやる!」って気合をいれて臨む感じですよね。
笑いがあふれているのに、客席と舞台との緊張感があんなにびりびりしている
ものもなかなかないでしょうね。
by nanayo (2006-09-17 22:41)