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舞台:『猫と針』(演劇集団キャラメルボックス) [キャラメルボックスのこと]

恩田陸 初戯曲、それをキャラメルボックスがやる。
これを観たくならないわけがない。
関西公演がないため東京遠征を覚悟したのに、即完で取れなかったチケット・・・。
だけど、幸運なことが重なって、
急遽いけることになりました♪

で、観てきた。
キャラメルボックス2007チャレンジシアターvol.5 【猫と針】
  07.9.4(火)14:00~@俳優座劇場

■作:恩田陸
■演出:横内謙介(扉座)
■出演:岡田達也 坂口理恵 前田綾 石原善暢 +久保田浩(ゲスト)

「人はその場にいない人の話をする」というコピーのこの芝居。
5つの椅子だけ、といういたってシンプルなセットの中で行われる
5人の役者による心理劇・・・というか会話サスペンスです。

「ザ・恩田陸!」という感じの素晴らしい内容でした!
恩田さんの小説をよく読む人なら、きっとこのニュアンス分かってくれるはず。)
でね、BGMもなんと生演奏!ウッドベース(・・・あ、チェロか。)
が奏でられる
その真横の席だったのでその雰囲気のいいことったら、鳥肌ものでした。


 <あらすじ>
 高校時代の友人、オギワラが亡くなった。
 葬式の帰りに集まってきた5人の男女。
 ささやかな宴がはじまり、とりとめのない世間話と噂話に花が咲く。
 しかし、どこかぎこちない5人。宴に隠された思惑とは?
 果たして彼らの行きつく先はどこなのか? (パンフレットより抜粋)

いつもの「分かりやすさ第一」のキャラメルボックスの芝居とはうって変わって、
オープニングから謎がたくさん。
一応、ワンシチュエーションドラマなんですが、
葬式後に彼らが集まった場所は一体どこなのか?
何故集まったのか?
何をしているのか?
同級生という以外の彼らのそれぞれのつながりは?・・・・などなど、
分からなかったことの一つ一つが
会話が進んでいくうちにだんだんと見えてきます。

そして、コピーにもあるように、
誰かが席をはずすと、残った人たちがその人物のことをあれこれと話しあう。
(こういうの、実際の生活でもよくあるよね、きっと。そこがまた面白い。)
その人についての噂や推測、どの情報が正しくて、何が間違っているのか?
誰が誰の何を知ってて、誰が自分の何を隠しているのか?
会話だけで進む、この辺の心理交差は、ほんとサスペンスです。

そのうち、その日葬儀だった友人の死に対しても疑問を持つ者、
さらには過去の出来事の不審点や、今日の集まりに隠された思惑に疑問を持つ者が現れてきたり、
ただの同窓生の楽しい再会の場ってだけではなくなってきます。
そこに見え隠れする殺意・・・、過去にあったかもしれない殺意・・・、
観ていて、「人の心理って怖い」ってどんどん思えてくるんですよね。

先にあった言葉の一つ一つの真意や、行動のワケが
後半に向けて明らかになっていくところも、
ミステリ本を読むのが楽しいのと同じように、観ていて面白かったです。

それと同時に、登場人物たちの独白の場面も見応えアリ。
みんなの前に見せている自分と、本当に心の中で思っているコトとのギャップ・・・。
“疑いや自尊”、“本音とたてまえ”があるのは誰だってそうかもしれない。
でも、それをまざまざと見せつけられると 怖い。
ってことが、よくわかりました。。。。

人物の台詞に、
印象的だったり考えさせられたりするものが多かったのも、
この芝居が「恩田さんっぽい」なと思ったところでもありました。


「誰にも気づかれずに何もなかったことになってしまう殺意って、
世の中にどれくらいあるのだろう?」

「加害者と被害者は紙一重だよね」

「時間が経つと、決定的に確実に変わってしまうことがあるということを私は知っている」

「(映像)に残しておかないと、本当にあったことだと思えないしリアルを感じない。」

台詞以外だと、ヤマダの奥さんがサボテンと金魚に付けた名前の由来・・・とか。。。。

観終わって、決して悲劇的なラストってわけではないのに、
まだ何かすっきりしないモヤモヤ感が残るような感じでした。
でもこの頭の中でぐるぐる渦巻く感じが、決してモチワルイんじゃなくてむしろ面白い
ってか、心地よくもあります。
ああ、やっぱ恩田ワールド、芝居になっても好きだなぁ。
これ、この舞台、改めて本でも読みたいです。(出版して欲しいわ。)


でね、この舞台の何が良かったって、
この秀逸な心理劇を、キャラメルの役者がやってるってことなんですよね。
いつものテイストと全く違うから、それが凄く新鮮で面白くてたまらなかった。

岡田達也さん
今回役者兼プロデューサーでもある、おっかーさん。
ほんと、よくぞこの舞台を作ってくれました!
役者としても、みごとなまでに毒のある部分を見せてくれる演技。
惚れ直した。

坂口理恵さん
軸がしっかりしているぶれのなさ。
ぐっちーさんがいるといないじゃ、やっぱり舞台の締りが全然ちがう。
大人数の中ではなく、少人数の中のぐっちーさんがずっと観たかったの。
満足です。

前田綾さん
今までは、スパスパ きびきびした役のイメージが多かったせいか、
今回みたいな、独特のゆったり口調の役が物凄く新鮮でした。
そして、物凄くよかった。人前と独白との口調の変化とか、何を隠しているのか
一番わからない、謎めき度ナンバー1でした。

石原善暢さん
好青年役の印象しかない(失礼^^;)石原さん。
こんなにじっくりしっかり長回しで彼の演技をみたのは、私初めてかも。
ちょっと、一癖アリな役もいいじゃないですか!
今度は本公演で、インパクトある役を見たいと切に思いました。ぐっジョブb

久保田浩さん
久保田さん、好きなんですよ、東京ハートブレイカーズで初めて見てから。
最近では、【天才脚本家】での伊藤君の印象がひたすら強いのですが、
その隙のなさ、無駄のようで無駄のない仕草。
わざとらしくなく、どうしてあんなに笑いをかっさらえるのか、この人は。
今回のこのシリアスな芝居でも、その味は不動。
今回のゲストが久保田さんでよかった。


こんなことは、大きな声では言えませんが、
正直私、今年既に3公演行われたキャラメルの本公演とあわせても
今回のチャレンジシアターが今のところ一番好きです。
(作も演出も外部なのに・・・。う、ごめんなさい。)



でも、でもね、コレだけ「面白かった!」と感想を述べていますが、
パンフレットの恩田さんからの一言、
「多分、邪悪な人ほど楽しめるとと思います」
という一文を読んで、とても複雑な心境です。 でも、面白かったものは仕方ないじゃん。


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CHIF

前日予約アリも知ってたけど、今回はご縁なしでして。
でもnanayo***さんのレポ読んで、
ウッドベースとか、いいなぁ。今更ながら興味津々~残念っ。

ひさしぶりになんかストレートプレイ見たくなっっちゃった♪
なんだか、ありがとーございますっ^^;
by CHIF (2007-09-07 00:06) 

nanayo

>CHIFさん
いろんなトコが私の好みのど真ん中な舞台で、
ホントおもしろかったです。
そういえば、ウッドベースってか、あれチェロだったな。(^^;)←いい加減。
「鯨」で青弦さんが弾いてた曲と一緒っぽかったから、
多分バッハ(?)でした。
(でも最初一瞬、「器用・・不器用・・」を思い出してしまったのはアノ場で私だけかもない・笑)

観る人それぞに、考えることがちがうだろうなぁと思うような中身の舞台
だったんですが、久々に恩田さんの本読みたくなりました。
まだ読んでない本いっぱいあるもの。。。。
by nanayo (2007-09-07 11:20) 

sumi

こんにちは。

「多分、邪悪な人ほど楽しめるとと思います」
↑これ、納得・・・。
というか、この作品が邪悪な気分にさせられる気がして・・・・。

nanayoさんのレポを読んで、
「そうそう、そうだよぉ」と改めて浸ってます。

『猫と針』、本当にいい作品でしたね。
by sumi (2007-09-10 10:18) 

nanayo

>sumiさん
ほんとに、面白く感じたので、
自分が邪悪だろうがなんだろうがいいんだい!と
開き直っています(^^)

ってか、自分の見せたくない闇部分を舞台上での演者たちによって
気づかされてような・・・そんなね、感じですよね。
by nanayo (2007-09-10 22:02) 

コメントなどありがとうございました~。
これを小説にしてほしいって私も思いました。
戯曲本でも構わないんですけど、やっぱり小説が読みたいかな。

いろいろと趣味が似ている感じがするので、
またちょくちょく覗かせていただきますね☆
by (2007-09-12 16:33) 

nanayo

>こだまさん
原作ものではなく、恩田さんが舞台のために書いた脚本・・・・。
その芝居を観られて本当に幸せでした。
でも、後々になっても構わないから、いつか本にはしてほしいですよね。

こちらこそ、そちらにもまた訪問させてもらいますね♪
by nanayo (2007-09-13 12:38) 

ゆみっち

神戸である「猫と針」の上映会いこうかなぁ~

悩むわぁ~
by ゆみっち (2007-09-14 15:03) 

nanayo

>ゆみっち
是非是非~♪賛否両論・・・ということをチラホラ聴きますが、
私はこれ、絶対おすすめですー。
もし、恩田さんの本が好っていうなら、好みなコト間違いなしです。
どうかしら?
by nanayo (2007-09-14 22:32) 

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