今日の本:『絶望ノート』(歌野晶午) [本のこと]
おもしろかったです。
以前、【葉桜の季節に君を想うということ】と【ROMMY】を
立て続けに読んで面白いと思い、
でも、「しばらくはいわゆる“歌野晶午的”ミステリはいいや。 」
・・・と、歌野作品を数年読んでいませんでした。
でも、うん。
久々に読んだコレ、面白かったです。
“歌野晶午的”に、さらに磨きがかかってた。
作者のファンも、作者を初めて読む人にも 楽しめる作品だと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
いじめに遭っている中学2年の太刀川照音は、その苦しみ、両親への不満を
「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねていた。そんな彼はある日、
校庭で人間の頭部大の石を見つけて持ち帰り、それを自分にとっての“神”だと信じた。
神の名はオイネプギプト。エスカレートするいじめに耐えきれず、
彼は自らの血をもって祈りを捧げ、いじめグループ中心人物の殺人を神に依頼した。
「オイネプギプト様、是永雄一郎を殺してください」―はたして是永はあっけなく死んだ。
しかし、いじめはなお収まらない。照音は次々に名前を日記帳に書きつけ神に祈り、
そして級友は死んでいった。不審に思った警察は両親と照音本人を取り調べるが、さらに殺人は続く―。
いじめの渦中にある中二の男子が、その怨念を「絶望ノート」(日記)につづり、
彼らを殺してほしいと神に祈ると、本当にその対象が死んでいく。
その実行犯は一体誰?・・・という点が謎になってくるわけですが、
(これがSFだったら、死神リュークとか出てくるんだけど・・・(笑))
そこはそれ、歌野作品ですから、ひとすじなわではいきません。
後半一気に明らかにされる真実は、ある程度は予想していたものであったけれど、
その人間模様の絡み合いが、その感情含めて複雑で、そこが読みどころかな。
そして、
「いじめというのは、傍から観ているだけでは、
それがいじめなのかただのふざけあいなのかわらりにくい」
という問題点をを上手く生かしてテーマにしてある物語であり、
また、「文字に記すこと」の重み、深み、そしてその力の怖さを見せてくれる作品。
<以下、ネタばれあり>
・
日記形式・・・っていうところが一つのポイントになってるので、
そこを生かしたミステリではあるんだろうなと思いつつ読んだのですが、
最後の明かされた真実と、主人公の思いや考えの中に、
子供ゆえの短絡さと、
子供ゆえの狂気が入り混じっているのが、怖かったです。
「自分が人を操れる力を手にしたんだ」と思い興奮したり、
自分を痛めつける創作日記を書くことに甘美を覚えるというところや、
自分の日記が死や犯罪の結果を招くことになったとわかっているのに、
その結果を、それほどショックに思っていない罪悪感の無さが怖い。
そして、ラストをああいうシーンで終わらせているところも
なかなかインパクトありました。(後読感は悪いけど。)
架空の世界から一気に現実に直面するシーンでスパンと終わる。
自分が想像し、日記上に創造してきたはずの世界は上手くいったけど、
現実は自分が予想し得ない展開に陥った主人公は、どうなるのか?
全体的通して、日記調で若干だらだら感あった物語のテンポを、
こういうふうに一気に終わらせるリズムは、結構好きです。
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