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今日の本:『暗黒童話』(乙一) [本のこと]

短編なのかと勝手に思い込んでいたら、長編でした。
ちょっと前に、文庫をまとめ買いしたときの中の一冊、ようやく読みました。

暗黒童話

暗黒童話

  • 作者: 乙一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 文庫

私の中の乙一作品のイメージそのものって感じの一冊です。
童話、 ミステリ、 ホラー、 不思議、・・・この要素が充満している。
その分、新鮮味はそんなにはなかったけれど、実際2001年発表の作品なのでね。
でも、うん、面白かったです。

目を移植された後、元の眼球の持ち主が過去に見ていた映像を
白昼夢で見るようになる少女(主人公)や、
自分の手で傷つけた生き物は、どんなに切り刻んでも死なず痛みを感じないまま
生き続けるようになるという不思議な力をもつ ある人物・・・。
なかなかに非現実な設定なのですが、
「暗黒童話」という作中にでてくる童話を、本編が進行する合間合間にはさんで
読ませる構成にしてあることによって
なんだかその非現実が、読むうちに自然に受け入れられてくる感じです。

中盤からは、ある事件の犯人目線からの記述も入り、
かなりグロテスクな描写だったりもするのですが、
どこか犯人が「奇人」というより「悲しい」存在として書いてあったりして、
そこがとっても乙一さんらしい気がしました。
ひどく猟奇的な犯行なのに、
犯人と被害者の関係に暖かさを作り上げてるとこ とか、
面白いですね。

読者に犯人当てをさせようとする書き方と、それをかわす述術トリックも上手。
・・・・って、目で最初から読んじゃうと面白くないかも知れなんだけど(^^;)、
素直にドキドキして読むのが楽しかったです。

そして、それ以外にも、
目の移植手術をされた主人公が、手術以前の記憶をなくしてしまい、
周りの目や自分自身との葛藤に悩みながら生活する様が
なんとも、切なく書かれています。
ミステリやホラー要素よりも、それが何より一番書きたかった要素なのではないでしょうか?
ラストの方では、だんだんと以前の記憶を取り戻した主人公が
記憶を失っていた間の弱い自分のことを、冷静に受け止め、
自分の中の大事な部分として考えるところが好きです。

 絶対に忘れない。私の知っている誰よりも強く生きた、
 あなたのことをいつまでも覚えていよう  
・・・本文ラスト一行より。

 

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せじ

はじめまして。せじと申します!
キャラメルボックス加藤さんのブログから飛んできました!
同じキャラメル好きで嬉しいなと思っていたら!ラーメンズにNACSにpiper!そして乙一さんもお好きと。
かなり私の趣味と被っていて思わずコメントしてしまいました。

良かったら、ブログにリンクを貼らせていただきたいのですが・・・よろしいでしょうか??
by せじ (2007-03-18 21:33) 

nanayo

>せじさん
コメントありがとうございます。
 >良かったら、ブログにリンクを貼らせていただきたいのですが
あ。ぜひぜひ♪ありがとうございます。

観劇好きへのとっかかりは、キャラメルでした。
そこから色々観に行く現在に至りますが、
これからも沢山劇場に行きたいなと思ってます☆
ナックスは、来月行くので楽しみにしているところです(^^)
by nanayo (2007-03-18 22:53) 

蒼雲

 蒼雲も乙一さんの暗黒童話は読みましたけど、ホラーだなぁーって。
 と言っても、この作品しか読んだ事がないのですけど。
 不思議な感じがする話ですよね。目の移植の話とか、体を刻まれて
生きてる話とか。ホラーなんだけど、不思議な話達だなぁーって思い
ました。
 でも、蒼雲としては基本的に暖かい話が好きです。
by 蒼雲 (2007-03-22 02:34) 

nanayo

>蒼雲さん
ホラーですねぇ、これは。
ホラー映画は全く観られない(怖くて)んですが、
“童話風、スプラッタホラー、不思議系空想話、ミステリー”・・・・そんな
要素がいっぱいの乙一作品は、結構ちょこちょこ読んでます。
全体的に暗めなのが多いですが、ちょっとジンとくるというか
切ないところが入っているのが好きなんです。
by nanayo (2007-03-22 10:23) 

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