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今日の本:『魍魎の匣』(京極夏彦) [本のこと]

久々に読んだ京極夏彦作品。
と、言ってもまだ2冊目だけど・・・。
読もう読もうと思いつつも、なかなかこの分厚さじゃきっかけがないと
とりかかれません。
今回は1月に映画をみた勢いで、やっととりかかれました。

魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)

魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 文庫


京極堂シリーズ第2弾。
読みごたえの凄さは、1048頁というそのページ数だけのものじゃぁない。
バラバラ猟奇殺人、遺産相続、少女誘拐、自殺未遂、霊能者・・・
いろんな事件が繋がりあい、絡み合い、渦を巻いている世界に、
どんどん陥っていってしまいます。
陰陽師たる京極堂の蘊蓄たっぷりの長ゼリフは今回も勿論健在だし、
小説家・関口君の精神の危うさや、
探偵・榎木津の特殊能力とその風来坊っぷり(笑)など、
お馴染みの登場人物の個性が特にしっかり堪能できる展開もいい。
特に、今回は刑事・木場が、事件の関係者である女優絹子への想いを抱えつつ
捜査へと動くところが、その葛藤も含めつつ読みごたえありました。
「刑事」という箱につまった、木場の心。。。。この表現がとても深いですね。


物語の合い間に挟まれる、久保竣公の小説【匣の中の娘】も、
あとあとストーリーにがっつり絡んではくるのですが、
その猟奇的な内容が、幻想的にさえ感じてきてしまう自分に気づいて、
ちょっと(自身が)コワくなりました。
「箱」に「みっしり」と、詰まっている少女。。。
「それ」が欲しいと思ってしまう男。。。
これ、先に映像(映画)で観てるから、すごく幻想的なイメージとして
頭に残っているせいなのかもしれないけど・・・。



それから、京極堂が、宗教がかった霊能者のところに乗り込むくだりも
読んでて面白かったです。
最初の安楽椅子探偵よろしく、情報だけで色んな真実を解き明かすところもいいんだけど、
黒衣をまとって教団に乗りこんで、
得意の口上で論破するとこの気持ちよさったらありません。
まさに見せ場。
京極堂の言っていることは、いろんな蘊蓄含んでて一見難しい気もするんですが、
読んでるとすごく納得しちゃうんですよね。
わかんなくても、わかった気にしてくれるところが
京極堂ワールドの良いとこなんだよ、きっと。


で、そんな、霊能だの憑き物だのの話だったのが、
ラストにいくにつれ、今度はどんどん医学だの科学だの哲学だのの話になっていきます。
これ、どんなSFだよ。とも思わせるくらいの展開にまで発展。
戦時中や戦後のこの時代設定に、美馬坂みたいなマッドサイエンティスト、
ホントに居そうな気になってくるからコワいです。

霊能的なキーワードだったはずの【魍魎】と【箱】。
それが、物理的な【箱】・・・そして、人間哲学的な【箱】へと意味を移しつつ
展開するところでは、色んなことを考えさせられました。
・肉体が死んでも、自分の脳(心?)が入った入れ物=箱を換えれば
それは生きているといえるの?
・肉体の一部やもしくは大部分が失われたからといって、生きていないといえるの?
・・・あぁ、もう、考えると眩暈がする。。。


京極堂のように、
「世の中には、不思議なことなんて何一つないのだよ。」とか、
「向こう側へ行ってはいけない。」とか、
きっぱりすっぱり、言い切っちゃえる強さがあればいいのに。皆。
いや、それは強さなんじゃなく、冷静さ?
いや、達観さ?
いや・・・・、なんだろう?



この、【魍魎の匣】と言うタイトルの意味が出てくるところがラストの方にありますが、
ああ、この人の言葉だったんだね。。。
(映画ではこうはっきり出てこなかったから、なんとなくスッキリしました。)

 



そして、その他にも、
「魍魎」とは、「うすぼんやりとした影のような部分」だとか、
「魍魎」とは、「あっちの世界へいく境界の部分」だとか、
そういうような表現もありました。
この、明確なようでよくわからない定義・・・、その「あいまいさ」がね、
とても背筋が寒くなるんですよね。


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コメント 4

ラッキークローバー

あぁ~、おいらも読まなくちゃ(汗)

映画は(3回ほど(爆))観ましたよ(へ0へ)/
by ラッキークローバー (2008-02-11 15:11) 

mimisuke

読破されたのですねぇ~。素晴らしい!!
しかし、映像よりもやはり、文章の方が「恐ろしさ」って伝わるんですね。
日記の文章を拝読していても、それがゾクっと伝わってきました。
by mimisuke (2008-02-11 16:20) 

nanayo

>ラッキークローバーさん
映画と原作は、ちょっと別物。。。としての面白さ満載です。
ぜひ、読んでみてください。

映画のキャスティング・・・、私は結構嫌いじゃないんですが、
小説読むと、どうしても椎名桔平=関口君ってのが馴染めません。
堤・京極堂も、阿部・榎木津も、宮迫・木場修もオッケーなのに。。。
by nanayo (2008-02-12 22:25) 

nanayo

>mimisukeさん
筋の話は同じなんですが、映画と随分違う部分がたくさんあって読みごたえありましたよ☆
文字で読むぞくぞく感もそうだし、文章で感じる登場人物の思いが、
映像よりも深々とつかめるところが面白いです。

蘊蓄云々、一見小難しい気がするけど、京極夏彦作品は読みやすいところが
いいですよね。
ぜひ。
by nanayo (2008-02-12 22:30) 

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