SSブログ

今日の本:『カレンダーボーイ』(小路幸也) [本のこと]

何を読もうか迷ったときにいつもお世話になっている
KobaさんのHPを参考にして、今回読んだのは小路幸也さん。
カレンダーボーイ

カレンダーボーイ

  • 作者: 小路 幸也
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 単行本

小路作品はまだ【東京バンドワゴン】しか読んだことがないのだけれど、
うん、これも面白かったです。

いわゆるタイムスリップ(タイムトラベル?)もので、
過去のある出来事を変えようとする主人公(たち)・・・というのは
よくあるパターンなのかもしれないけど、
なんだか、ちょっと違うの。
話のテーマが、「タイムトラベル」自体にあるわけじゃなく、
もっとね、なんかね、ちがう部分を作者は伝えたかったんだろうな・・と、
あのラストを読み終えて、そんな気がしました。
切ないです。
でも、読んでよかった。

「ノスタルジックタイムトラベル小説」と、帯文句は謳っているけれど、
なるほどなぁ。。。。




2006年の現代では、48歳の大人である三都と安斎。
ある日二人の精神だけが、
1968年の時代の二人が同級生だった小学生の体に
タイムスリップしてしまうことから物語りは始まります。
一晩寝て目覚めるたびに、過去と現在を行き来する心。
昔、1968年に死んでしまった同級生の女の子を救うために、
計画を練るのだが、そこには当時世間を騒がせた三億円事件まで
絡んでくる・・・というなかなか壮大な展開です。


一章ずつが比較的短いので、
さくっと読みやすくて一気に読めてしまいます。

過去を変えることで起こるタイムパラドクスについては、
え?それ説明不足じゃない?と、ちょっと思ってしまうかも
しれない書き方になっています。

過去で小学校の先生の家の火事を防いだら、
現在ではその先生の子供が怪我を負っていた。 とか、
現代で安斎(タケちゃん)の浮気が消滅したら、
過去ではそのお父さんが浮気をしていた。 とか。

でも、「どこがどうかわったから、結果がこうなる。」というつじつまあわせじゃなくて、
「何かを変えれば、理由はわからないけど、どこかで歪みが生じるんだ。」という
ルールじゃないルールが、私は逆に納得できたし、
それこそが、この作品のテーマなんじゃないか と。
この説明があるからこそ、このエンディングが成り立つんだ とも。


そして、物語の中で、タイムスリップと重要な要素が三億円事件の真相。
もちろん、実在のこととは関連がないとの注釈はあるものの、
その三億円事件をきっかけにして同級生の女の子が死んでしまう・・・とか、
その三億円を奪おうとする計画を練る・・・とか、
果てには事件の真犯人まで言及されてるわけなんですが、
なんとも、ラストはあっさりしています。
もう、わざとだろ。。。というくらい、
その模様があっけなく、回想録としてかたずけられてしまっているところは、
ちょっとあっけなくて、「え?これだけ?」と、思わなくもなかったのだけど、
その後に待っていた最後の2章の展開で、
もう、すべてが切ない感動に変わりました。
感動 と言うと、語弊があるかもしれないけど、その「せつなさ」の波で、
この小説が好きになったから、
他のいろいろな突っ込みどころも全部許せてしまった。



 その瞬間 俺は悟った。
 何もかもすべて。
 煙草を持つ指先が少しだけ、震えた。

ここを読んだとき、本を持つ私の手も震えていました。
泣きそうになった。

「タイムトラベルと三億円強奪の話」と聞いて、すごいアドベンチャー小説を
期待してしまう人もいるかもしれないけど、
この作品は、そのスペクタクルアドベンチャー部分はおまけとして、
ただのエッセンスとして読んでほしい。
そのほかに、きっと心の琴線に触れる何かがあるはずだから。。。

 


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 2

madocco

こんばんは(´ー`)

小路幸也さん。
いくつか読んでて好きな作家さんです!
この作品の存在知りませんでした(゜◇゜)
内容が気になります。
ぜひ呼んでみようと思います。
by madocco (2009-06-13 20:16) 

nanayo

>madoccoさん
小路さんの作品は、やはり最初に読んだ「東京バンドワゴン」の
印象が強くて、とてもほのぼのした人情小説っていう認識でした。
もちろん、この作品も やさしい部分やほんわかした読みやすさは
その印象と共通しているのですが、
「ノスタルジック」さが 読了後にざざっと打ち寄せてくる感じの作品です。
主人公の世代とは違っていても、楽しめました。
ぜひ、読んでみてください。
by nanayo (2009-06-14 00:52) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0