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今日の本:『マリアビートル』(伊坂幸太郎) [本のこと]

9月に出ていた伊坂さんの新刊【マリアビートル】、
ちょっと前に読み終わっていました。
これとの関連作である【グラスホッパー】(2004年発刊)を読み返していたら
感想を書くのが遅くなっちゃった・・。
もちろん単体で読んでもちゃんと独立して面白かったです♪
(むしろ、マリア・・の方が伊坂さんらしいポップさが多めかも。)

 
マリアビートル

マリアビートル

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/09/23
  • メディア: 単行本


 <ストーリー>「BOOKデータベース」より
 元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、
 東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。狡猾な中学生「王子」。
 腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。
 彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。
 『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。3年ぶりの書き下ろし長編。


物語の舞台は新幹線の中。全てがそこで終始する・・という
なかなかドラマチックで面白い作品。
殺し屋や物騒な人物達がいっぱい登場するし、
結構沢山の死人が出ちゃってる・・・のだけど、
伊坂流のキャラクター設定の面白さ、会話の小気味よさ、
意外な展開、さり気なく感動的なエピソードの混ぜ込み方、
どれもが、ちょっとずつセンスが良いのです。



見た目は健全な中学生だが冷酷非道で大人を翻弄することに快楽を覚える王子慧
王子に息子をひどい目に合わされ復讐しようとする元殺し屋の木村
二人組みの殺し屋、蜜柑(文学好き)と檸檬(機関車トーマス好き)、
とことんツキがない殺し屋七尾
それぞれがそれぞれの目的のために乗り込んだ
東京発盛岡行きの新幹線「はやて」の車内で交差し繋がりあい展開する出来事が、
最後一体どういった結末に導かれるのか、
ドキドキしながら読みました。

何度も新幹線を降りようとするのに、どうしても降りられない七尾の不運さにあきれつつも、
意外と機敏で強くて素早い判断と行動をみせるそのギャップに驚いたり、
とことん嫌な人間として描かれている王子の悪意が腹立たしくてたまらなくなったり、
トーマス豆知識をいちいち披露する檸檬と淡白に対応する蜜柑のコンビが微笑ましく思ったり、
章ごとに切り替わる話が、どの人物が主人公になったパターンで読んでも面白かった。
読んでて飽きがこなかったです。

そして、その者たちに新幹線の車内や車外(電話等の通信手段や情報で)で絡んでくる
その他の登場人物も(少しだけの登場でも)あとあとかなり重要な要素や役割を
担ってたりして、あなどれないんですよね。
(グラスホッパーで登場した鈴木、スズメバチ、槿(あさがお)などのキャラクターも出てくるし。)

で、一番カッコよかったのが、まさかの木村の父母コンビ。
王子の進退に決着をつけに来るのがまさかジジババコンビだなんて思ってもみなかったよ。
カッコよすぎです。その正体に脱帽。
ただ、王子が結局どうなったかを、はっきりと書いてないところが、想像をかきたててくれて
もやもや&ゾクっとするところでもあるけれど、それもいいかもしれないなと、そこは納得しておきます。
「おまえに何も説明しない。もやもやしたままでいろよ」と、木村ジジが王子に言った台詞そのままに
作者が読者に言ってるのかもな・・・なんて思ったりもしてね。



印象的だったのは、「マリアビートル」のタイトルの意味。
槿(あさがお)が病院の庭で天道虫を見つけてその英名をふと思い出すシーン。
 「天道虫は英語で「レディバグ」あるいは「レディビートル」。
 その「レディ」=「マリア様」のことで、マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく虫。。。
 背中の黒い斑点に世界中の悲しみを置き換えて・・・・」
そんなようなことが書かれてるシーンは、この作品のメインの物語が起きている新幹線の中じゃなく、
外側にいる槿のシーンだったってとことが、なかなかオツですよね。


そして、ラストシーンには、「ほらな、復活したろ」と言うかのようなレモンとミカン。。。。

もう、何がって説明できないところで、色々と琴線に触れるエッセンスを持ってきてくれる
上手さが満載の伊坂作品でした。
うん、面白かった。



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