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今日の本:『いつまでもショパン』(中山七里) [本のこと]

中山さんの音楽ミステリー
「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に続く、
シリーズの新作が文庫で出てたのを見つけたので読みました。

【いつまでもショパン】(中山七里)

いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 中山 七里
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/01/09
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
難聴を患いながらも、ショパン・コンクールに出場するため、
ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。
しかし、コンクール会場で刑事が何者かに殺害され、
遺体の手の指十本がすべて切り取られるという奇怪な事件に遭遇する。
さらには会場周辺でテロが頻発し、世界的テロリスト・通称“ピアニスト”
がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。
岬は、鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!



シリーズの中でも、最高にクラシックの世界にどっぷり浸れる今作。
クラシックの世界 というか、ショパンのピアノの世界 なのですが、
もう、ひたすらショパンのピアノ曲の洪水。ですよ。

ポーランドで開催されたショパンコンクールが舞台になっているのですが、
そこに我らが岬陽介(過去作品でとても重要な探偵役を担ってきたピアニスト)が
日本代表の2人のうちの1人として参加するわけです。
会場周辺ではテロが頻発し、コンクール会場で刑事が殺害される
という過酷な状況で、
コンテスタントとしてピアノを弾きながらも、
事件を検証する岬。
通称「ピアニスト」とあだ名されるテロリストの正体に、
岬がラストで辿り着くシーンも圧巻でしたが、
やはり、今作は、その主軸のミステリ部分よりも何よりも、
ピアノの演奏シーンの描写が凄過ぎて、
読み終わって印象に残るのは、ほとんどそればかり。。。

ピアノコンクールの話なので、
とにかく出場者一人一人の演奏のシーンがめちゃめちゃ長くたっぷり
描かれているのもこの作品の注目どころ。
文字だけでよくこんなに豊かに音楽を表現できるものだな、と
中山作品を読むたびに思うのですが、今回はその量も桁外れ。
膨大なページがピアノ演奏シーンにあてられていて、
息をするのも忘れるほどに、その世界にひき込まれます。
(文庫のあとがきで、実際のピアニストが書評を寄せていますが、
そこでも絶賛されているくらいだもの。)


主軸の物語の主人公は、ショパンコンクールの出場者(コンテスタント)の1人である
ポーランド人のヤン・ステファンス。
彼が自国の誇りであるショパンの音楽に向き合いながら、葛藤し、
他の出場者(岬も含めて)の演奏や生き様に影響をうけながら、
テロの恐怖や身近な人の死と向き合い、
コンテスト期間の短い日数の中で、ピアニストとしても人間としても
どんどん成長していく姿がとても素敵でした。


ポーランド人にとってのショパンがどれだけ特別存在であるか、
ショパンの曲の解釈のそれぞれの国での違い、
・・・など、クラシック音楽に詳しくない私みたいな者は特に、
初めて知る世界がそこにありました。

『音楽は世界の共通語だ という者は多い。しかし、それは
音楽というものの最大公約数しか感知できない半可数の戯言でしかない。
(・・・中略・・・)その成立までの背景を血肉として理解できる。』
というヤンのコトバには、ハッとさせられたなぁ。


そして、テロの脅威の中で、ピアノを弾くしかできないピアニストら
(主人公ヤン)の葛藤に対する、
岬のコトバにも、グッときました。

『その人が生きる手段というのは、その人の武器になるんです。』

 

名誉や、賞賛や、達成感。それが一体何になるのか?
何かに一生懸命に打ち込むことは、それが一体に何になるのか?
・・・と、ふと迷ったとき、
「自分にはその武器がある」ということを知れたなら、
きっと何かが変わるんだと思う。
主人公ヤンが、変わったように。。。

 

いい作品でした。

巻末に収録されている短編も、オマケ感覚で面白かったです。
過去作品の登場人物らが、出てきます♪


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