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今日の本:『オーダーメイド殺人クラブ』(辻村深月) [本のこと]

久々に読んだ辻村深月作品、面白かったです。

辻村深月【オーダーメイド殺人クラブ】

オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)

オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)

  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/05/20
  • メディア: 文庫

内容【BOOK】データベースより
クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。
死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、些細なことで激変する友達との関係に悩んでいる。
家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる
同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末は―。



「これは、悲劇の記憶である」という一文から始まる物語。


女友達の中でのハズす(仲間外れにする)ハズさないのもめ事や、
スクールカースト(イケてるコ、イケてないコの階層)、etc.
大人になってから振り返れば、
なんてくだらないことに悩んだりしてたんだろう?と思うようなことも、
中学生たち本人らの間では、切実で重要で大事な日々。
大人からみれば些細なことでも、
子供(それも大人一歩手前の子供)であるがゆえに、些細なことに
ムキになったり、冷めて見せたりしてしまう時代だったよな、中学生って。
・・てことを思い出させてくれる。

ただ、″オーダーメイド殺人”というタイトルの言葉にもあるように、
この物語では、「人の死」に強く惹かれてしまう主人公・小林アンが、
毎日の日々に嫌気がさして、「自分を殺してほしい」と、クラスメイトの
徳川にオーダーするという、割と分かりやすい「闇」が描かれてる。
同世代の少年・少女Aが起こす自殺や殺人の記事をスクラップし、
死体に見立てた人形の写真集に陶酔するアンと、
小動物の死体を平気で扱い、死体の写真にも詳しい徳川は、
教室内では別階層の存在として決して接触しないにも関わらず、
「殺し」の依頼を通じて、
「小林アンの死」という事件を一緒に作る同志になる。

″自分を殺してもらう”・・・つまりは、自分が死ぬという計画を
ずっと語り続けられるくらいのインパクトを世間に残すほど劇的に
したいと打ち合わせる彼らの行動や思考は
とても残酷でグロテスクな部分もあるので、
一見、猟奇的小説の類か、とも思わせるのだけど・・・
そこはそれ、流石の辻村作品。
そんな厭な後味を残したままでは終わらせないし、
「結局死にませんでした、チャンチャン♪」とあっけなくも終わらせません。
こういう結末で締めくくるのを好きか嫌いか、ちょっと好みが
分かれるのかもしれないけど、
私はとても好きなエンディングでした。

<以下、エンディングに触れています>




彼らの立てた「オーダーメイド殺人」の計画は
結局は果たせないまま終わるのですが、
描かれている彼らのその後が、私はたまらなく好きです。

「死にたい」と思っていたほど辛かったはずの
友人関係、親子関係も、
死なずに過ごしているうちに、時間の経過とともに
その「嫌気」も「闇」も薄らいで、
あっけないほど普通の年月が経過していく。。。
あんなに熱病のように夢中になった「自分が殺される(死ぬ)」計画も、
いつしかその熱さも自然と忘れてしまい、
中3、高1、高2、高3・・・と、成長していくアンや、
その周りの人々・・・。
猟奇的なことに何故か夢中になった主人公は、
まさしく「中二」の病だっただけなんだな、と知らされるエンディングには、
ああ、やっぱりそういうもんなんだよな~、
というがっかり感があるものの、
でも同時に安堵感も覚えます。

ただ、それだけでは終わらない、“辻村流”の締めくくりは、なんとも素敵。
「殺人」なんて言葉をタイトルに入れてたのも、すべては演出だったのね、
と思うくらい一気にその「闇」を翻して、
淡くて切ない少年少女たちの恋の話へと一変させるフィニッシュ。
それでこそ辻村深月だ、と思わずにはいられない物語でした。
私は、好きです。

うん、面白かった。





追記:チラリと出てくる他作品とのリンクに、今回も注目。
今回は、「スロウハイツの神様」のチヨダコーキを連想させるワードでしたよ・・・(^^)





 


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