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今日の本:『ニシノユキヒコの恋と冒険』(川上弘美) [本のこと]

映像化された『センセイの鞄』の作者としての名前は知っていたけれど、
川上弘美さんの本を読むのはこれが初めて。
いつだっけか、本の雑誌ダ・ヴンチで“今月のプラチナ本”に選ばれてたよな・・・
というのを思い出して、文庫になったこの作品【ニシノユキヒコの恋と冒険】を
読んでみました。

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

  • 作者: 川上 弘美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 文庫


「にしのゆきひこ」という男と、付き合ったり関わったりした
10人の女性から見たそれぞれの物語。
サラッと不可も(&付加も)なく読めちゃうんだけど、
読んだ後感じるん色んな恋愛の体感は決して後味悪くなく、
それが自分が体験したものとはかけ離れている感情でも、なぜか懐かしさを覚えるような・・・
そんな感じの本でした。

西野君。西野さん。ニシノくん。ニシノ。幸彦。ユキヒコ。ニシノさん。・・・
色んな呼ばれ方で登場する10代~50代までの彼は、
女の子の懐に、ふっと入り込むのがとても上手。
「遊び人」って呼ぶ程にチャラチャラした印象は受けないものの、
彼女がいても元カノと平気で会うし、別の人と寝たりもする。
いわゆる女に不自由していないタイプ。
客観的に女の目から見たら(多分、男から見ても)、あんまり好きになりたくない
ハマっちゃあいけないよ。と言いたくなるような人物に思える。

でも、登場する女性たちは皆、彼にハマっているように見えて、実は凄く冷静でもある。
10人の主人公の女性達の物語の中には、一度も彼と修羅場を演じる場面は出てこない。
こんなに優柔不断っぽくて遊び人っぽい彼なのに、
ドロドロなシーンがちっともない。
まるで出あったときから「別れ」が既に想定してあって、
それが「いたって自然なもの」だと、ハナから知っているような冷静さに見える。

ニシノユキヒコという彼の存在は、
共通して彼女らにとって、他の男の人とは違う「特別」な存在であるにも関わらず、
共通して「離れていくのが自然」な存在でもあるところが、
至極不思議だなぁって思うのだけど、
そう考えると、ニシノユキヒコって、すごくかわいそうな男の人なような気がしてしょうがなかった。
モテるけど、特別な存在にもなりえるけど、
でも最後まで誰のものにもなりえない・・・。 ある意味寂しいよね。

それとも、このニシノユキヒコって存在は、特定の人物ではなくて
色んな年代の人が通り過ぎる「恋愛の思い出」の偶像的な「モノ」なのかしら・・・?
とさえ思えてくる、そんな作品でした。
 


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コメント 4

piccorina

こんにちはー!
私もこの本、読みましたー!
川上弘美さんが好きなのです。
見た目(装丁)も可愛いですよね。
ニシノユキヒコ、なぜか憎めないタイプ。
こんな人、いそうでなかなかいないです。
by piccorina (2007-11-12 13:55) 

nanayo

>piccorinaさん
うん、装丁、可愛いですよね♪
そう、こんな人なかなかいないと思う。
このタイトルが、「恋と“冒険”」っていうトコロがなんだか好きです。
川上さんの本はこれが初めてでしたが、
また読んでみようと思います☆
by nanayo (2007-11-12 21:53) 

phin

nanayoさん、こんにちは。
川上さんですか……未読の作家さんなんですよね。「センセイの鞄」が話題になった時に読もうかと思ったのですが、あらすじを知って琴線に触れずにそのままです。
でも、今作は何か良さげですね。面白そう、かもです。読んでみたい本リストに入れておこうと思います。
by phin (2007-11-14 23:07) 

nanayo

>phinさん
私も、今回初めて読みました。
丁度、なんとなく印象に残ってたこのタイトルが文庫になってるのを見つけたので。
力いっぱいおススメ!!ってほど、ガツンとくる作品とは言いませんが、
(割とサラッとめな作品だと感じたんでね。)
男性が読むとどう感じる本なんだろ?という興味もあります。
by nanayo (2007-11-15 22:05) 

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