今日の本:『MISSING』(本多孝好) [本のこと]
この本がきっかけでした。
何年か前の夏に、書店で文庫本フェアかなにかをしていたときに、
いわゆるジャケ買いした本。
(その頃は作家をあまり知らなかったので、
ジャケ買いなんていうものを結構したもんでした。)
今は、知らない作家の本を表紙のイメージだけで選んだりするのは、
アタリ・ハズレの差が大きいことが多々あった経験上
殆どしなくなったけど、
あの時あの本を選んだのは、まちがいなく大当たりだった。
【MISSING】
今週、改めて読み返してみて、ああやっぱ好きだと実感しました。
5つの短編からなる一冊。
全部が全部最高!ってほどではないんだけど(失礼)、
その中の1編、【瑠璃】は、もう、
今読んでも、本多作品の中で一番好きかもしれない・・・ってくらい良いです。
・
「眠りの海」・・・
死のうと思って死ねなかった主人公が、海辺で出会った少年に
過去を語る・・・という設定。
昔事故で死なせてしまった助手席に乗っていた彼女の、
事故を誘発した行動の真意とは?
憶測を促す少年とは誰だったのか・・・。
ミステリというほどでもないミステリです。
「祈灯」・・・
読みながら、ずっとタイトルの意味を考えてました。
事故で死んだ妹になりきって生活していたユウレイちゃん(←渾名)。
両親へ償わせたい気持ちと、自分が償わなければいけない思い・・
友達の真由子と真由子の兄からの目線で語られるユウレイちゃんの物語。
ラストに真由子が言った、「祈る人になりたい」という言葉が、
胸にのこりました。
「蝉の証」・・・
秀逸なタイトルをつけるなと、ラストの一頁を読んで思った。
“年をとると、死は怖くなくなる・・・。
でも、自分が死んだ後、生きている誰かに自分を思い出して欲しい。”という思い。
まだ私は、自分が年老いて死ぬ時のことを考えることはないけれど、
その気持ちはなんとなくわかる気がしました。
「蝉があんにうるさく鳴くのは、きっと・・・・」
主人公の祖母が言う台詞には、すごく深みがありました。
全体的に、すごく詩的な文章が印象的な作品でした。
「瑠璃」・・・
このストーリーの中に、どれだけ感情を揺さぶられる要素が入っているだろう。
何年か経って、また読み返して同じ感覚になりたいから、
あらすじやないようは、ここに書くのはやめようと思う。(レビューなのに、意味がない^^;。)
ただ、懐かしくて、ワクワクして、切なくなって、涙が出た。
技巧的でも、複雑でもなく、ミステリでもなく、素朴な話。
でも、読んで良かったと心から思った、「少年と、4つ年上の従姉ルコの物語。」
「彼の住む場所」・・・
TVで顔を知られる知的な有名人・・である昔の同級生が、
僕だけに語った、彼の中の心のモンスターの存在。
誰でも心の中にはモンスターを飼っているのかもしれない。
誰かに対してひどく残酷なことを、心の中では想像してしいるのかもしれない。
そういえば、この本のタイトル「MISSING」って、
短編どれかのタイトルって訳じゃないけど、
全体を通して、共通する思いを集約した言葉なのかな。。。
MISSING ・・・「欠けていること。失われていること。」
「誰かがいなくて寂しい。」
短編集なんですね。
どんな内容か分からなくて、手を出さないでいた。
同じ作家の「MOMENT」とても良い作品でした。
by クレマチス (2009-02-27 00:11)
>クレマチスさん
MOMENTもいいですよねー。
ぜひ、この本も読んでみてください。
「瑠璃」だけでも読む価値あると思うの。
by nanayo (2009-03-01 22:16)