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舞台:『万獣こわい』(ねずみの三銃士 第3回企画公演) [お芝居・舞台のこと]

パルコ・プロデュース ねずみの三銃士 第3回企画公演
【万獣こわい】

万獣.jpg 森の宮.jpg

2014.5.2(金)19:00~@大阪 森ノ宮ピロティホール
 
脚本:宮藤官九郎
演出:河原雅彦 
出演:生瀬勝久・池田成志・古田新太
   小池栄子・夏帆・小松和重

「鈍獣」「印獣」に続く第三弾「万獣こわい」を観に行ってきました。
過去2作は映像でしか見たことなかったので、
ようやく生で ねずみの三銃士 が観られて、嬉しい限り。

いやぁ、今作もドス黒かったです。しかし面白かった。
予想通り、気持ちいいほど、しっかり嫌な気分にさせてくれる舞台。

 カーテンコールで、生瀬さんが、
「あまちゃんのイメージで宮藤くん脚本のこの舞台を見に来た人スイマセンね。」
と、謝っていたけど、
 多分、そんなつもりの人は居てないと思う。
この“後味が悪いほう”のクドカンテイストを目的に、
みんな観に来てるんだから。

そこが面白さなのだ。
 

以下、感想。(ネタバレ有。)

 



冒頭では、落語の「饅頭怖い」を披露する噺家師匠(小松さん)と、
弟子三人(古田さん、生瀬さん、成志さん)が登場。
その弟子らは見るも恐ろしい気味悪い妖怪で、
そのうち師匠をガブガブ食べてしまう…というシュールなオープニング。
(妖怪たちが客席に下りて、「空席が怖い!」と、
たまたま空いていた1席を殴っていたのは古田さんだったかな?)

それに続けて、
過去2作を映像でダイジェストで見せつつ
ねずみの三銃士のテーマ(そんなのあったんだ?)を
古田・生瀬・池田が、歌い踊ってスタートです。

 

 

物語は、実際に起きた某一家軟禁殺害事件を彷彿とさせるようなお話。。。

暴力で支配され、家族と供に監禁されていた少女トキヨ。
ハロウィン前夜、犯人ヤマザキの元から抜け出したトキヨが逃げ込んだのは、
不倫の末に一緒になった男女2人が開いたカフェだった。
8年後、大人になったトキヨが、助けてくれたそのカフェの夫婦のもとを
訪ねてきたことから、彼らの運命が狂い出す。
トキヨの里親アヤセ、カフェのマスターの前妻の弟、カフェの常連客、
をも巻き込んで、今度は彼らが、いつしかトキヨの支配下に置かれていく・・・。

二階建てになった舞台セット。
セットの上段部で、過去の監禁事件の回想や、裁判のシーンを見せながら、
下段で現状の話が展開していくのだけれど、
残忍なシーンがどばどば見せられる中に、
がつんがつん笑いや悪ふざけが絶え間なく繰り出され 笑いが巻き起こるという、
この絶妙な混ざり具合が最高でした。
怖いのか面白いのか、気分悪いのか楽しいのか、
観ている自分の感情がわからなくなってきます。

役者陣は、もうそれぞれが完璧に 軽さと重さを兼ね備えていて、
流石の一言。
シリアスとユルさを違和感なく同時進行させられるって、スゴイ。

 

生瀬勝久さん(カフェのマスター)
 不倫の末に陽子と一緒になってカフェを開くも、
 前妻に子供の養育費を払い続ける日々。
 前妻の弟とは付き合いが続いている。
 陽子との間にはなかなか子供が出来ず、段々とギクシャクしてきていた。
 そんなところに、訪ねてきた8年前に助けた、監禁事件の被害者トキヨを
 バイトとして受け入れてしまう。
 会えない娘にトキヨを重ねるうちに、妻よりもトキヨに肩入れしてまうその
 軟弱さが、イラッとする。
 裁判で、トキヨをかばった時の心境を聞かれたときにも
 いつも、「わかりません」。ってホントずるい。
 ホントにわからないんだとしても、最終的には無罪になっちゃって、
 スタンス自体が無意識の確信犯なんじゃないのか、こいつ。って何度も思った。
  妻との義務感だけのSEXを「なんか、わちゃわちゃして嫌だ。」っていう表現が
 面白かったな。「わちゃわちゃする」とか言われたら妻、そりゃ凹むって。
 (この時の小池さんの表情最高だった。)
 
 しかし、ホントに、生瀬さんの早口台詞は、違和感なく耳に届く。
 強気で嫌みな役も似合うけど、真面目に見せかけた弱気な役も似合う。上手い。
 佐村河内氏の物まねとかもしてました(笑)


古田新太さん(トキヨの里親、アヤセ)
 前半では回想シーンの中の犯人ヤマザキ役で登場していた古田さん。
 里親アヤセとしては中盤からの登場。
 事件現場のマンション前で泣いていたトキヨを里子に迎えてから、
 変わってしまったのか、もともとそういう資質があったのか、
 いずれにしても、「やってまいましたわー。」とカップを壊すのと
 同じリアクションで人を殺す。
 アンパンマンマーチ(着信音)を聴くとキャラ豹変するのは、
 やっぱりトキヨが関わってるんだろうね。。。
 凶悪キャラに豹変する前のキャラのギャップも面白かったけどね。
 「シフォンケーキかロールケーキにするか迷ったけど、こっちにして正解♪」
 てはしゃぐ、なにあの乙女キャラ(笑)
 ふり幅広すぎて、面白すぎた。


池田成志さん(カフェの常連客 野呂)
 カフェで厚かましくPCやルンバの充電しつつ、
 耳栓して黙々とPCで仕事しているお客。
 唯一の息抜きキャラかと思いきや、実は記者で、
 そのうえ、いつの間にかカフェの夫婦と一緒にトキヨの支配下に
 置かれてしまう。
 関係ないんだから逃げればいいのに!と思うのに、
 何故か巻き込まれてしまうのその危うさが、これまた腹が立つ。
 
 しかし、回想シーンでのなるしーのメリンダ(外国人)はツボでした。
 片言のあの喋り方は憎めない。(笑)


小池栄子さん(マスターの妻 陽子)
 一番の被害者なのは陽子さんだよね。もうかわいそうすぎる。
 不倫して一緒になった相手とは、なかなか子供ができず、
 そして異常な世界に巻き込まれてしまう。。。
 確かに気が強くて守ってあげたいタイプではないけど、
 それでも、きっと、ただ普通の幸せが欲しかっただけなはず。
 トキヨの方をかばう夫の、いったいどこが好きだったのだろう。
 
 小池さんは、舞台で見るたびに良くなる気がする。
 声がいいしよくとおるし、
 面白いことをやっても無理してる感と嫌みがない。本気で笑える。
 長州力の物まねや、タコ踊りが最高すぎて惚れました。


小松和重さん(マスターの前妻の弟、 のぶやん)
 姉の元旦那といまでも親しくしていて、実は姉への養育費をマスターに
 貸している…という、のぶやん。
 警察官だし、一番まともな人間だと思ってたのに、
 陽子をなんとか助けてくれる唯一の人間だと思ったのに、
 途中で警察はやめちゃうし、協力すると言ってたのも途中で放り出して
 しまおうとするし、最終的にはアヤセに殺されて、みんなにバラバラに
 されちゃう不憫さ。殺人→解体 というシーンがほんとにスプラッタで
 恐ろしかったです。ハロウィンの夜だからバラバラ人体持ち歩いても分からない
 ・・・なんて、そんあことあるかー?恐ろしすぎる。

 でも、トキヨから「はなない」(華がない)と呼ばれる小松さん、
 笑っちゃってスイマセン。


夏帆さん(監禁事件被害者 トキヨ)
 少女時代に監禁事件の被害者という過去を持つトキヨ。
 しかし、親切にしてくれた里親や、助けてくれたマスター夫婦に
 上手く取り入って、まさかのあんな悪魔な女だったなんて。
 「怖い怖い」とうそぶきながら、
 本当は自分の嫌いな人が死んでいくのを見るのを望む。
 「怖い怖い」と泣きながら、
 実は誰かがそれを実行するよう誘導する。
 とにかくこの女の目的自体がわからなくて、嫌気がさした。
 きっと元来持ってい生まれた性質だから…と思うしか、
 この種の事件を見る手段はないんだだろな。
 
 演じる夏帆さんは、舞台で見るのは初めてでしたが、
 達者な出演陣の中でも、けっして埋もれず、
 しっかり悪魔なインパクトを刻んでらした。
 「マスター」→「じじぃ!」の呼び変わるシーンががナイスだったなぁ。
 

 

途中で監禁事件の犯人ヤマザキの役が古田さんから小松さんに変わっているとこ
とか、トキヨの証言のイメージと実際の人物の様子の違いを象徴してて、
奥深くて、ぞぞっとしたり・・・しつつも、
不謹慎になモノマネ合戦や、唐突なABBA風の歌やダンスに爆笑してしまう
自分自身が気持ち悪いほどでした。
拘置所書の受付窓口の、「1番の窓口で書類を出して2番の窓口で証明書を出して3番の…」
の早口合唱のシーンで、「この人だけ言ってなかった」と突っ込まれる生瀬さんとか、
めちゃめちゃ面白かったんだもの・・・。

そして再び、ループするラスト。

いやぁ、ほんとにスプラッタでホラーで気味悪い、精神的にもまいっちゃいそうな
舞台でした。なのに、あんなに笑ってきてしまった自分への罪悪感。
怖い怖い。

追:そして、橋本じゅんさんが声だけの出演をしていたそうな。まぁ、贅沢な。

 

 

 

 


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